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足がすくむこと

先日緊急手術があり、大腸穿孔、腹膜炎の手術がありました。若い女の子でしたが、2か月前にも便がつまり、腸が穿孔し、人工肛門をあげていました。今回も人工肛門のところで便がつまり、腸に穿孔しました。

便づまり(便秘)で大腸が穿孔するなんてことはよっぽどのお年寄り以外はめったにありませんし、特に若い人でなることは皆無に等しく、私にももちろん経験はありませんでした。2か月前の手術は私は立ち会っておらず、話には聞いていましたが、まさかこれほど組織が脆弱であるとは思いませんでした。

おそらく、先天性疾患か、後天的に基礎疾患があって組織がもろくなったのだとは思いますが、とにかく腸をよけただけでも腸間膜が裂け、出血し、腸鉗子で腸をつかんだだけでも裂けてしまうといった具合に組織が脆弱でありました。
そのため、穿孔部を含め腸切除を行い、さらにその部位を腹壁外に出し、人工肛門を造設する予定でしたが、その引き出そうとした腸管が裂け、しょうがないのでそこを盲端(縫い閉じてしまうこと)とし、手前の横行結腸に双口式の人工肛門を造設しました。その間にも、関係のない小腸が視野確保の際よけた操作で腸間膜がさけ、腸切除を2回する羽目になってしまいました。

結局、手術時間6時間、出血1900mlと大手術となってしまいました。

術後は幸い落ち付いておりますが、術中は「本当にこの手術は終われるのだろうか」と思うくらい初めてといっていいほどの焦燥感を味わいました。
このとき頭に浮かんだのは「福島県立大野病院での事件」でした。
亡くなられた患者さんにはご冥福をお祈りいたしますし、ご家族の方々は気の毒に思います。
しかしながら術前の状態を見て、手術のときの大変さを想定できなかった場合、はたしてその準備や他院に回すなどのことはできるのだろうか、術中に想定外のことが起きた時に教科書的な手技、操作を守りそれでうまくいくのだろうか?
専門ではないので、その疾患についての明言できませんが、原則的には、答えはNoだとおもいます。
さらにそのことを刑事事件として、犯罪者として扱われるのであれば、我々は今後まっとうな医療を続けていくことはできるのでしょうか?
誰しも、医者であるならおもわぬ予期せぬことに陥る可能性は十分にあるわけで、それに対し、自分の経験や知識のあらん限りを使って対処をし、場合によっては他の医者の力を借りることを必要としますが、なんとか助けようと努力していることには違いありません。それで刑事事件で犯人扱いされるとなれば、何を頼りに外科医をしていけばいいのでしょうか?

今後の「大野病院事件」の結末は多くの医師が注目していますし、私も見守っていきたいと思います。その判決が今後の医療界に大きな影響を与えることは間違いありません。

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